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アスベストにばく露した会社に「再雇用」され、発病・労災請求する場合は要注意

お知らせ 制度・改善

 アスベストなど労災の給付基礎日額は、労働基準法の「平均賃金」に相当する額です(発病前3か月間の賃金を総日数で割った金額。平均賃金に相当する額を日額とすることが適当でないときは、厚生労働省令で定めるところによって政府が算定する額)。

 労働局による平均賃金の決定処分に対する審査請求は厚生労働大臣に対して行いますが、審査請求を棄却すべきだと大臣が判断した場合、行政不服審査会にかけられます(建設アスベスト給付金の審査請求は審査会にかけず、棄却されます)。

再雇用賃金でなく、正社員賃金で算定するよう審査請求したが、石綿にばく露した再雇用時の賃金でよし、とする行政不服審査会の答申

 被災労働者が石綿関連肺がんを発病して労災認定されたものの、正社員8年間の賃金でなく・嘱託1年間の賃金で平均賃金が算定されたので、連絡会として代理人になり、審査請求しました、

 しかし、8月5日の答申で「審査請求は、棄却すべきであるとの大臣の判断は、妥当である」とされ、正社員賃金にすべきだという主張は認められませんでした。

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定年前後で雇用関係が切れているなら、正社員賃金にできるという通達は、「再雇用時に石綿ばく露がない場合」に適用されると、厚生労働省が審査会に回答

 2023.3.29基補発0329第2号通達「定年退職後同一企業に再雇用された労働者が再雇用後に石綿関連疾患等の遅発性疾病を発症した場合の給付基礎日額の算定に関する取扱いについて」(厚生労働省労働基準局補償課長)によれば、定年退職を契機として、新たに従前とは異なる内容の労働契約を締結したものであると認められる場合、再雇用賃金ではなく・正社員賃金で平均賃金が算定されます。これは、低日額問題に関する今までの運動の成果です。

 ところが、厚生労働省は、上記通達の「適用範囲を『再雇用後は石綿ばく露のおそれのある作業が認められないとき』に明確に限定していないものの・・・0329通達は、基本的には再雇用後に『石綿ばく露のおそれのある作業が認められないとき』における『最終ばく露事業場を離職した日』の判断を適正化することを目的とした通達です」と審査会に回答しました(6月24日監督課の事務連絡)。

 そのため、0329通達に関する実務の流れは、再雇用後に石綿ばく露がある時は再雇用賃金となり、他方で、ばく露がない時は「雇用契約の形態」「役職」「賃金額」等を総合的に勘案することで、労働契約が定年前後で継続していれば再雇用賃金、切れていれば正社員賃金とする、ということになります。

2016.7.20労働保険審査会の裁決

 これまで、再雇用後に発病した場合、一律再雇用の低額にされてきました。

 しかし、別件の労働保険審査会裁決では、定年退職後に雇用形態・役職、賃金・出勤日数が変更され、石綿にばく露される作業に従事していないと判断されました。そして、「正社員であった時と契約社員であった時とでは、就労実態が大きく異なっていることからすると、請求人は、定年退職を契機として、一旦会社を離職し、その後、新たに会社と従前とは異なった内容の労働契約を締結して、会社に改めて再雇用されたものとみるのが相当である」ということで、再雇用賃金ではなく・正社員賃金に是正されたのです。

 したがって、この裁決に沿い、上記0329通達に定める雇用形態・役職、賃金・勤務時間・出勤日数、退職金・社会保険、石綿ばく露作業など作業内容という要素を踏まえて、雇用関係が切れているか(→正社員賃金)・継続しているか(→再雇用賃金)判断すべきです。

再雇用されたかたが労災請求する場合、再雇用時の石綿ばく露に注意

 ただし、厚生労働省も・行政不服審査会も、正社員時代だけではなく・再雇用時にも石綿にばく露した場合、再雇用賃金にしてしまいます。

 労災請求する際、よく調べずに安易に再雇用時も石綿ばく露があったと主張すると、正社員賃金でなく・再雇用賃金(低額)にされる危険性があります。

行政不服審査会に対する第2主張書面(7/21)

 審査会の答申に、われわれの第2主張書面が欠落しているので、抜粋します。

1 0329通達の恣意的な運用

     監督課6/24の回答で「明確に限定していないものの」、0329通達の適用は再雇用後石綿ばく露がない時に限定されると主張するのは、行政の恣意(しい)的な運用を認めるもので納得できません。平均賃金は、被災労働者や遺族の(年金)給付基礎日額を長きにわたって決定する大切なことです。

     本件では○○労働局が、0329通達に定めた判断要素を検討せず、事務連絡(2023.3.29補償課長補佐「定年退職後同一企業に再雇用された労働者が再雇用後に石綿関連疾患等の遅発性疾病を発症した場合の給付基礎日額の算定の事例について」)の事例3に飛びついて、再雇用の低額に決定しました。監督課7/9の回答で「広く国民に周知すべき類いのものではない」とされる事務連絡の事例で、本件を即断したことは被災労働者を馬鹿にするものと考えます。 

    2 硬直的かつ機械的な適用

     同じく監督課6/24の回答で、定年後再雇用後も石綿ばく露作業が行われ、「定年前の労働契約とは別の労働契約が成立していると認められる場合」も、定年後再雇用された後の退職日が「最終ばく露事業場を離職した日」だと主張しています。

     しかし、この主張は下記の判決・答申に反します。

     すなわち被災労働者の石綿ばく露歴において、複数の保険関係があり、石綿ばく露のおそれが高い保険関係と・軽微なばく露の最終事業場という経緯をたどった場合、軽微なばく露の保険関係でなく、ばく露のおそれが高い事業場が平均賃金算定の基礎とされています。

     (1)裁判例

    『社会労働衛生』16-3・102頁のとおり深見裁判長(現建設アスベスト給付金審査会長)による横浜地裁判決は、「原告は、労働者期間中に該当する期間における石綿ばく露により本件疾病を発症したと認めるのが相当であり、非労働者期間中については、仮に石綿にばく露していたとしても本件疾病の発症とそのばく露との間には相当因果関係を認めることはできないというべきである」と判示しています。

     (2)貴審査会の答申

     4/29主張書面別添『社会労働衛生』36頁のとおり、「かかる取扱いをする趣旨は、『最後の事業場』では極めて軽微なばく露作業しかしておらず、他方で、それ以前には石綿ばく露のおそれが高い作業を行った事業場がある事例においては、極めて軽微な石綿ばく露作業を行っていた期間を平均賃金算定の基礎とすることは不合理であることにあるという判断を前提とする。こうした考え方は、一人親方に限定される性格のものではなく、普遍的な合理性を有するものであると考える。・・・こうした事例においては、本件各通達を硬直的かつ機械的に適用して保険給付を行うことを避けなければならない」と答申されています。

    3 嘱託の軽微なばく露

     本件は4/29主張書面で申した通り、社員時代8年余のばく露が発症の原因であり、嘱託1年間は社員時代の年数にくらべ軽微なばく露なので、発症と嘱託時代のばく露との間には相当因果関係がありません。

    ・・・社員時代のばく露と発症の間に相当因果関係があり、本件平均賃金の算定は定年退職時の賃金を基礎とすべきです。