私たちの要望

石綿救済法改正の要望

石綿健康被害救済法ではアスベスト被害の特殊性に照らして、労災がきかない被害者を救済するなどします。
法の環境省関係が救済給付、法の厚生労働省関係が労災時効救済である特別遺族給付金です。
環境省関係は基金、厚生労働省関係は労災保険で財源が異なります。
労災時効救済の特別遺族給付金と、救済給付の特別遺族弔慰金の請求期限などは、法改正により10年延長されました。
法改正に付随する要望は、ふたつです。

厚生労働省は2012年、「1995-2005年の死亡診断書」に基づき中皮腫の遺族に個別周知し、 今年「2006-2016年の死亡診断書」に基づき同じく個別周知しつつあります(今のところ、関東甲信越のみ)。
そのうち法務局が死亡診断書を5年で廃棄した分については、 「人口動態統計」のデータに基づき、統計法に縛られることなく周知してください。

肺がんは医学資料がなくても、同僚が労災認定されていれば「本省照会」に基づき、特別遺族給付金を支給することがあります。
このように肺がんを救済できることを、石綿認定事業場にわかりやすく周知してください。

連絡会の法改正の要望

1石綿健康被害救済推進協議会(仮称)の創設

救済給付の療養手当の一律部分を残しつつ、生活困窮がないようにして下さい。
労災のように、救済給付も遺族年金を支給してください。石綿被害救済を、前向きに進めてください。
そのような主張で2016年の中央環境審議会において、私たちの代表である古川和子委員が奮闘しましたが、被害者代表はひとりなので、そもそも委員会の構成が不公正です。

ILO(国際労働機関)は、公益・労働者代表・使用者代表の三者構成です。 このような原則を取り入れた、下記の委員会構成を参考に、推進協議会を創設してください。

過労死等防止対策推進協議会

  • 当事者:4人
  • 専門家:8人
  • 労働者代表:4人
  • 使用者代表:4人

今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会

  • 有識者:6人
  • 被害者団体:4人
  • オブザーバー:4人

今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会

  • 有識者:6人
  • 被害者団体:4人
  • 自動車ユーザー団代:3人
2救済法環境省関係

石綿がんをはじめがんの療養は、健康保険と介護保険を使います。
アスベストが原因での介護なので、救済給付に「介護費」を追加し、介護保険の自己負担をなくしてください。

3救済法厚生労働省関係

労災の休業補償や遺族補償は、給付基礎日額によって額が決まります。
この日額は、発病前3カ月の平均賃金で算定しますが、石綿疾病は長い潜伏期間をへて発病するので、けがなどのように単純ではありません。
迅速に救済するため、便宜上「最終暴露事業所の賃金(保険関係)」で算定していますが、不合理が生じて下記の通り部分的に是正してきました。

2008-2009年

建設業で労働者期間のあと、特別加入期間の暴露が軽微なら(特別加入額が低額)、最後の特別加入期間でなく、労働者期間で算定

2016-2017年

正社員のあと、再雇用した場合、再雇用の低額ではなく、定年時の賃金で算定

2017年

複数の事業場で石綿に暴露した場合、最終事業場の暴露が軽微な場合(低額)、濃厚に暴露した事業場で算定(相当額)

連絡会の福井の会員である片山さんは、ご主人が石綿に暴露した会社を若年時に離職しているので、はたちの賃金で遺族補償が算定されています。 1970年に職業がんの場合、発がん物質に暴露した年齢でなく、発病した年齢で算定すると国会答弁されています。 また、2020年複数就業者について、「非災害発生事業場」の賃金も合算するとされました(労働能力損失補償の考え方)。

不合理な賃金算定を公正に是正しなければなりませんが、今まで抜本的・系統的に検討されてきませんでした。 上記の片山さんは、2005年からずっと公正な是正を要望しています。

労災の原則は、「災害発生責任」と「労働能力損失補償」です。 このふたつの原則を整合させるには、石綿の初回暴露から発病までのすべてのポイントで一番適当な額にする必要があります。 そのような公正な是正の制度を、法の厚生労働省関係に追加してください。

法改正に付随する要望

医学的な検討を必要とする問題があります。
下記ふたつについて医学的に検討して、是正してください。

労災認定に必要な石綿疾病の石綿暴露期間は、医学的に検討され決められています。 中皮腫1年、びまん性胸膜肥厚3年、肺がん10年などです。
ところが、石綿肺は粉じん暴露期間のうち、原則「労働者期間」が「事業者期間」より長いこととされています。 この基準(基発第51号通達)には、医学的な根拠がありません。

労災請求時に、労働基準監督署から主治医に依頼される診断書様式が不備だ、と専門医から指摘されています。
それなのに、この様式は建設アスベスト給付金制度でも使われています。