労災給付基礎日額を、アルバイト賃金から正社員賃金に是正
尼崎・東海支部のAさんの夫は、ニチアス(株)羽島(はしま)工場で石綿にばく露し、2008年9月、腹膜中皮腫に罹患しました。職歴は、下記のとおりです。
① 1963年3月-2005年3月 耐火板仕上、パッキングなどの検査・・・石綿ばく露あり
② 2005年4月-2007年3月 定年退職後、再雇用・・・石綿ばく露なし
③ 2007年4月-2008年10月 アルバイト・・・石綿ばく露なし
岐阜労働基準監督署は労災認定する際、アルバイト賃金から給付基礎日額1989円と算定し、最低保障額4060円としました。
筆者が代理人をつとめた別件の同種事案で、2016年7月20日に労働保険審査会は、再雇用ではなく、アスベストにばく露した正社員時代の賃金にするよう裁決しました。厚生労働省は2017年6月26日、この裁決を踏まえた通達を出しました。
しかし、上記2017年通達を改正した、2023年3月29日の「定年退職後同一企業に再雇用された労働者が再雇用後に石綿関連疾患等の遅発性疾病を発症した場合の給付基礎日額の算定に関する取扱いについて」によれば、従前の解釈は「定年退職後も引き続いて嘱託として同一業務に再雇用される場合には、実質的には一つの継続した労働関係」なので、再雇用賃金にするということでした(1970年1月22日の通達)。
Aさんの場合、定年退職後の再雇用ではなく、アルバイトですから、到底「一つの継続した労働関係」とは言えません。2016-2017年、従前の解釈に照らしても監督署の算定は誤りだとして岐阜労働局や厚生労働省に掛け合いましたが、是正されませんでした。
連絡会として、低日額問題に取り組むなか、労災遺族補償年金を受けているAさんは、毎年8月に来る「最低保障額の改定による変更決定通知書」について、岐阜労災審査官に審査請求しました。この通知自体ではなく、そもそもの日額が誤りだという主張です。
審査請求が棄却され、労働保険審査会に再審査請求しました。審査会の審理が2025年7月17日に開かれ、被災労働者の労災認定時に給付基礎日額について不服を申し立てなかった理由を問われました。代理人である筆者は、「中皮腫で苦しむ被災労働者と遺族が、労災日額に関する通達を知る由もない。瑕疵(かし)ある決定を行いながら、当時不服審査請求しなかったからいけない、と監督署が主張するのは許されない」という意見を、審査会に送りました。
労働保険審査会は裁決せずに、岐阜監督署に連絡し、自庁取消させ、給付基礎日額は正社員時代の賃金にもとづく1万3310円に是正されました。発症した2008年にさかのぼって是正されたので、追給は17年間を超えます。
あきらめずにたたかったAさんが、被災者家族の公正な保護を勝ち取られました。(斎藤)
