元国鉄職員に対する鉄道・運輸機構の認定実績
逆転認定された特別遺族給付金について、日和田修司さんが『社会労働衛生』23-1に執筆しています。
父、旧国鉄職員「不認定」から「認定」へ – アスベスト患者と家族の会 連絡会
その論考の末尾に、参考資料として鉄道・運輸機構の認定実績について記載されているので、以下に、紹介します。
鉄道・運輸機構のHPに公開された資料「元国鉄職員に対する石綿(アスベスト)を起因とする業務災害補償等認定実績」を参考として、以下にデーターを抜粋編集した。
表-1 近年の業務災害補償等認定状況一覧
年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | 過去5年度 の累計/平均 |
申請者数 | 21名 | 17名 | 26名 | 16名 | 20名 | 100名 |
認定者数 | 10名 | 12名 | 14名 | 12名 | 12名 | 60名 |
認定率 | 47.6% | 70.6% | 53.8% | 75.0% | 60.0% | 60.0% |
令和7年3月31日現在の認定者合計 562名(内救済新法に係る者 139名)
表-2 疾病別認定者数一覧
疾病名 | 石綿肺 | 肺がん | 中皮腫 | びまん性 胸膜肥厚 | 良性 石綿胸水 | 認定者数 | (肺がん+中皮腫) |
認定者数 | 52名 | 193名 | 278名 | 37名 | 2名 | 562名 | 471名 |
比率 | 9.3% | 34.3% | 49.4% | 6.6% | 0.4% | 100% | 83.8% |
表-3 アスベストによる業務災害が発生した勤務箇所(認定者数)一覧
北海道
[[旭川工場(1)]]/旭川客貨車区(1)/旭川車掌区(1)/名寄保線区(1)/岩見沢駅(1)/岩見沢第2機関区(1)/釧路機関区(2)/釧路検車区(1)/[[釧路工場(2)]]/釧路車両所(1)/五稜郭機関区(3)/[[五稜郭工場(3)]]/札幌運転区(3)/札幌駅(1)/札幌機械区(1)/札幌客貨車区(2)/札幌工事局(1)/[室蘭電気区(1)]/深川機械区(1)/深川機械区留萌支部(1)/静内保線区(1)/帯広運転区(1)/ 池田機関区(1)/稚内機関区(1)/長万部機関区(1)/[函館桟橋(1)]/[函館船員区(10)]/苗穂駅(3)/苗穂機関区(2)/[[苗穂工場(42)]]/苗穂車両所(1)/北見機関区(3)/鷲別機関区(1)/留萌駅(1)
計34箇所 98名
青森県
青森機関区(1) 計1箇所 1名
岩手県
盛岡機関区(1)/[[盛岡工場(3)]]/北上機関区(1) 計3箇所 5名
宮城県
仙台機関区(1)/[[仙台工場(1)]]/長町駅(1)/長町機関区(3名) 計4箇所 6名
秋田県
秋田機関区(1)/南秋田運転所(1)/秋田車掌区(1)/[[土崎工場(10)]] 計4箇所13名
山形県
山形保線区 (1) 計1箇所 1名
福島県
郡山機関区(1)/[[郡山工場(13名)]]/福島機関区(1)/[福島建築区(1)] 計4箇所 16名
茨城県
常陸大子(だいご)運転区(1)/勝田電車区(2) 計2箇所 3名
栃木県
小山電車区(1)/小山機関区(1)/鶴田駅(1)/宇都宮機械区(1) 計4箇所 4名
群馬県
高崎機関区(1)/高崎第一機関区(1)/高崎第二機関区(1)/[高崎変電所(1)] 計4箇所 4名
埼玉県
大宮駅(1)/[[大宮工場(13)]]/大宮操車場(1) 計3箇所15名
東京都
丸の内通信区(1)/田端操駅(1)/三鷹電車区(4)/汐留駅(1)/[新宿電力区(1)]/[[大井工場(19)]]/池袋電車区(1)/[中央鉄道病院(1)]/八王子機関区(2)/尾久(おぐ)客車区(1)/品川駅(1)/品川機関区(1)/品川電車区(1)/品川信号区(1)/[武蔵野電気区(1)]/豊田電車区(1)/立川機関区(1) 計17箇所39名
神奈川県
横浜機関区(1)/茅ヶ崎機関区(1)/新鶴見運転区(1)/新鶴見貨車区(1)/新鶴見機関区(2)/[川崎発電所(3)]/川崎保線区(1)/[[大船工場(16)]] 計8箇所26名
新潟県
二本木駅(1)/[信濃川発電所(1)]/信濃川工事局(1)/新津運転区(1)/新津機関区(1)/[[新津工場(4)]]/長岡運転所(1)/直江津客貨車区(1) 計8箇所11名
石川県
金沢運転所(1)/[[松任工場(13)]] 計2箇所 14名
福井県
敦賀第二機関区(1) 計1箇所 1名
山梨県
甲府運転区(1) 計1箇所 1名
長野県
篠ノ井機関区(1)/松本運転所(1)/松本機関区(1)/長野運転所(1)/長野機関区(1)/[[長野工場(22)]] 計6箇所 27名
岐阜県
高山機関区(1)/太田保線区(1)/木曽福島機関区(1)」大垣電車区(1)計4箇所4名
静岡県
伊豆多賀駅(1)/用宗(もちむね)駅(1)/東静岡駅(1)/[[浜松工場(28)]]/浜松機関区(1)/浜松車掌区(1)/富士保線区(1) 計7箇所 34名
愛知県
稲沢機関区(2)/神領(じんりょう)電車区(2)/名古屋機械区(1)/名古屋機関区(1)/[[名古屋工場(6)]] 計5箇所 12名
滋賀県
米原客貨車区(1)/草津電修場(1) 計2箇所 2名
京都府
[加茂自動車区(1)]/[京都自動車営業所(1)]/向日町運転所(2)/西舞鶴客貨車区(1)/梅小路機関区(1)/福知山客貨車区(1)/[福知山自動車営業所(1)]/福知山保線区(1) 計8箇所 9名
大阪府
宮原機関区(1)/宮原客車区(1)/宮原電車区(1)/吹田機関区(2)/[[吹田工場(17)]]/吹田操車場(1)/吹田第一機関区(1)/大阪第一運転所(1)/[大阪印刷所(1)[/[大阪建築区(1)]/大阪工事区(1)/[大阪自動車営業所(1)]/大阪機械所(1)/竜華(りゅうげ)客貨車区(1) 計14箇所 31名
兵庫県
[甲子園口鉄道寮(1)[/[[高砂工場(3)]]/鷹取機関区(2)/[[鷹取工場(27)]]/尼崎駅(1)/尼崎保線区(1)/摂津本山駅(1)/姫路第二機関区(1)/姫路客貨車区(1)/豊岡保線区(1) 計10箇所 39名
奈良県
王寺駅(1)/王寺機関区(1)/奈良機関区(1) 計3箇所 3名
和歌山県
和歌山機関区(2)/和歌山車掌区(1)/和歌山電力区(1) 計3箇所 4名
鳥取県
鳥取機関区(2)/[[後藤工場(21)]]/米子駅(1) 計3箇所 24名
島根県
浜田客貨車区(1) 計1箇所1名
岡山県
岡山駅(1)/[岡山建築区(1)]/岡山機関区(5)/岡山信号通信区(1)/[新幹線総局岡山電気所電力支所(1)]/倉敷保線区(1)/津山機関区(1) 計7箇所11名
広島県
[[広島工場(11)]]/広島第一機関区(1)/広島第二機関区(1)/広島運転所(1)/広島保線区(1)/糸崎機関区(1)/東広島駅(1) 計7箇所17名
山口県
宇部電車区(1)/下関駅(1)/岩国機関区(1)/[岩国自動車営業所(1)]/厚狭(あさ)駅(1)厚狭機関区(1)/小野田駅(1)/長門機関区(1)徳山駅(1)/徳山車掌区(1)[[幡生(はたぶ)工場(10)]] 計11箇所20名
香川県
高松機関区(2)/[[多度津工場(11)]] 計2箇所13名
愛媛県
松山気動車区(1) 計1箇所1名
高知県
[佐川自動車営業所(1)] 計1箇所1名
福岡県
[[小倉工場(18)]]/門司機関区(1)/[門司鉄道病院(1)]/東折尾駅(1)/直方(のおがた)駅(1)/直方機関区(1)/東小倉駅(2)/[[博多総合車両部(1)]] 計8箇所26名
佐賀県
鳥栖駅(1)/鳥栖保線区(1)/鳥栖機関区(1) 計3箇所3名
長崎県
佐々機関区(1)/長崎客貨車区(1)/長崎車掌区(1) 計3箇所3名
熊本県
[山鹿自動車営業所(1)]/八代駅(1) 計2箇所2名
大分県
[臼杵自動車営業所(1)]/大分駅(1) 計2箇所2名
宮崎県
宮崎機関区(4)/南延岡機関区(1)/高鍋駅(1) 計3箇所6名
鹿児島県
鹿児島機関区(1)/[[鹿児島工場(3)]]/鹿児島車両管理所(2)/[鹿児島自動車営業所(1)]/鹿児島信号通信区(1)/出水機関区(1) 計6箇所9名
過去データーから判明した特記事項を以下に記す。
(1) 鉄道・運輸機構による平均認定率は60%であり、年度によって±15%程度の幅はあるが、ほぼ一定である(表-1参照)。逆に言えば、理由は不明であるが、残り40%(推定値374名)の元職員の申請を「不認定」としているということである。
因みに、厚労省労働局発表「令和5年度石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況まとめ(確定値)」では、「労災保険給付」は1305件の請求に対して1170件(認定率89.7%)の支給決定であった。「特別遺族給付金」については、317件の請求に対して159件(認定率50.2%)の支給決定であった。全体では、1622件の請求に対して1329件(全体認定率81.9%)の支給決定となる。
鉄道・運輸機構の平均認定率60.0%と厚労省の全体認定率81.9%の差はどこから生じたのだろうか?
(2) アスベスト5疾患(石綿肺,肺がん,中皮腫,びまん性胸膜肥厚,良性石綿胸水)のうち、「肺がん」と「中皮腫」が圧倒的に多く、全体の8割を占めている(表-2参照)。
(3) 勤務箇所別で見ると、認定数が最も多い工場([[ ]]表示)では、「保温・断熱材として使 用されていた石綿」の吹付や除去作業を行っていた工作関係者や打音検査等を行っていた検査関係者の元職員に、認定者が圧倒的に多い(表-3参照)。
(4) 認定数が多い勤務箇所順は以下の通り。
「工場(318名)56.6%」→「機関区(87名)15.5%」→「駅(34名)6.0%」→「運転所/運転区(17名)3.0%」→「電車区(14名)2.5%」→「客貨車区(13名)2.3%」→「保線区(12名)2.1%」→「車掌区(6名)1.1%」→「機械区/機械所(6名)1.1%」→「車両所/車両管理所(4名)0.7%」→「信号区/通信区(3名)0.5%」「工事局/工事区(3名)0.5%」→「操車場(2名)0.4%」→「電修場(1名)0.2%」「検車区(1名)0.2%」「気動車区(1名)0.2%」
上記勤務箇所のうち「駅」が3番目に多いのは意外であったが、その大半は下記の通り技術職であった。
操車掛(6名)連結手(6名)転轍手(2名)貨物掛(2名)配車掛/配車係(2名)構内指導係(2名)駅務掛/駅務係(2名)列車手(2名)構内掛(1名)構内作業員(1名)運転掛(1名)予備助役(1名)荷扱手(1名)駅手(1名)
(5) 上記以外で、旧国鉄では希な勤務箇所([ ]表示)として、「自動車営業所(10名)1.8%」「船員区(10名)1.8%」「建築区(3名)0.5%」「電気区/電力区(3名)0.5%」「鉄道病院(2名)0.4%」「発電所(2名)0.4%」「変電所(1名)0.2%」「印刷所(1名)0.2%」「鉄道寮長(1名)0.2%」「桟橋(1名)0.2%」がある(表-3参照)。
これらの勤務箇所のうち、他業種でも「バス運転手及び整備関係者」「船舶関係者」「大工関係者」「電気関係者」「電力関係者」において、アスベストによる健康被害が発生している。なお、「印刷工場」については不明(建物に原因?)だが、「鉄道寮」と「病院」については「間接被爆」の可能性がある。