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参院選 公開質問書ーー各党の回答

お知らせ 制度・改善

 6月30日付けの質問書に対し、各党からご回答をいただきました。

アスベスト被害のすき間ない救済に関する公開質問書(アンケート)

 アスベスト被害救済について、貴党のご尽力に感謝申し上げます。

 私たちは、全国のアスベスト疾病の患者と家族が集まり、その親睦と治療経験の交換、生活環境の改善に努めている団体です。

 今年は、兵庫県尼崎のアスベスト公害が発覚した「クボタショック」から20年の節目です。このような事態と世論、各党のご尽力により、石綿救済法が制定されました。

 2027年までに、石綿救済法の見直しを行うことになっています。

 つきましては、下記の通り質問しますので、ご回答をぜひよろしくお願いいたします。

 なお勝手ではありますが、ご回答は7月14日までにmailかFAXでいただければ幸いでございます。

1 石綿救済法(環境省関係)救済給付の改善について

 アスベスト健康被害に対して、衆院予算委員会(第6分科会)で「労災の場合は遺族年金がございます。この基金による救済には特別遺族弔慰金の支払い、こういうものはございますけれども、年金のような形にはなっていない、これを何とかできないか、こういう御要望も出ているわけでございます」と指摘されています(2013年4月15日、中野洋昌議員)。

 救済給付の遺族年金創設や療養手当の改善について、賛同していただけますでしょうか。

自由民主党

 いただきましたアンケートですが、以下URLの「総合政策集2025J-ファイル」において、記載しておりますのでご確認いただけましたら幸いです。
https://storage2.jimin.jp/pdf/pamphlet/202507_j-file_pamphlet.pdf
 662 公害健康被害対策等の着実な実施 水俣病問題の解決やアスベスト被害者の救済、アスベストの飛散防止など、公害等による健康被害への対策を着実に進めます。併せて、国内における毒ガス弾などの老朽化化学兵器に関する環境調査や安全確保に向けた取組みも継続して推進します。

公明党

 石綿健康被害救済法の第1条では、その目的について、「石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずることにより、石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする」とされています。

 本制度に基づく療養手当の給付水準については、同制度の性格や類似する制度との均衡を考慮しながら設定されているものと承知しています。引き続き、均衡の取れた制度とすることが必要と考えます。

 国会で同法が制定された際、アスベストによる健康被害には長い潜伏期間があるという特殊性があり、労災補償対象者以外の被害者の方々について個別的な因果関係を特定することは極めて困難であることから、因果関係に基づく補償制度を構築することはできないことが議論されています。

 また、仮に補償制度とすると、因果関係の特定が困難な中で、様々な方々の暴露形態を特定し、その原因者を追及して賠償責任を確定する必要性が生じ、結果として迅速な救済も図れないため、個別の因果関係は問わず、アスベストによる健康被害者をすべからく救済するという構造とする等の議論がなされています。

 今後とも制度を取り巻く事情の変化を注視しつつ、アスベストの被害を受けられた方やご遺族の方に、引き続き適切に救済給付を行っていくことが重要であると考えています。

立憲民主党

 救済給付の療養手当について、生活が困窮する場合の増額や労災の遺族補償年金のような仕組み等、すき間のない救済の実現のため、当事者の皆さまの生活実態などを考慮していくべき課題であると考えます。

日本維新の会

 政府はアスベスト(石綿)による健康被害に対して、各種の救済制度を設けて対応してきました。しかし、認定基準の厳しさや基準設定の難しさ、治療法の研究開発費が十分ではないことなど、現在も様々な課題が残っています。石綿健康被害救済法の見直しも検討されています。

 日本維新の会は、アスベスト健康被害問題の解決に向けた取り組みや、被害を受けた方が取りこぼされることのない救済の枠組みの構築に向けて、国に対して誠実に向き合うよう強く求めていきます。全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てされることなく、相互に人格、個性を尊重し合い、共生する社会の実現に向けて全力を尽くしてまいります。

日本共産党

 賛同します。安心して療養できるようにすべきです。

国民民主党

 アスベスト被害者の属性により救済内容に格差が生じない隙間のない救済を実現するため、縦割り行政を排し、情報公開、情報開示の促進、患者・家族をはじめとする関係者の皆さんのご意見を踏まえるとともに、関係者の皆さんの参加を確保しながら、アスベスト対策を総合的に推進します。

れいわ新選組

 賛同いたします。

「救済給付」を定める現行の石綿救済法は、給付金の性格が「見舞金」であるため、原因者負担という補償のための責任規範が不存在であり、使用者の責任を前提とする労災制度と比べて、給付内容に大きな格差があります。現状では、被害者が指定疾病でお亡くなりになった時に一時金として特別遺族弔慰金が支給されますが、遺族年金はありません。

 今後、「責任」に基づいた「補償給付」を実施し、被害者本人の死亡によって破壊された遺族の生活が回復し安定した生活を取り戻せるように遺族年金を創設するなど労災制度に近づけていくべきです。そして、責任に基づいた補償給付を実施している公害健康被害補償法を念頭に、療養手当を拡充すべきです。

2 石綿健康被害救済推進協議会の創設について

 衆院環境委員会で「隙間のない救済にするために、環境省だけでなく、省庁横断の石綿健康被害救済推進協議会のようなものが必要ではないか」と指摘されています(2024年6月4日、稲田朋美議員)。

 また、参院環境委員会でも「過労死等防止対策推進協議会は、ILOの三者原則に当事者を加えて、専門家八人、当事者四人、労働者代表四人、使用者代表四人という委員構成になって」いるとして、当事者参加の構成が提起されています(2022年6月10日、山下芳生議員)。なお、参院の「国際労働機関(ILO)創設百周年に当たり、ILOに対する我が国の一層の貢献に関する決議」(2019年6月26日、猪口邦子議員外七名発議)でも「三者構成主義」がうたわれています。

 上記石綿健康被害救済推進協議会の創設や当事者の恒常的な参加について、賛同していただけますでしょうか。

自由民主党

 1に同じ。

公明党

 公明党は、政務調査会のもとに「アスベスト対策本部」を設置しており、患者・ご家族・ご遺族の皆様をはじめ原告団、弁護団の方々からお話をうかがいながら、アスベスト被害の救済に一貫して取り組んできました。

 2021年には、自民党と公明党で「与党建設アスベスト対策プロジェクトチーム」を設置し、原告団・弁護団の方々からお話をうかがいながら議論を重ね、建設資材のアスベストによる健康被害を救済する「石綿被害建設労働者給付金支給法」を成立させることができました。

 また、同与党プロジェクトチームは、2023年に、石綿関連疾患の治療研究の推進に向けて、労災疾病臨床研究事業費補助金における石綿関連疾患の治療研究に係る予算の拡充を政府に求めてきました。

 引き続き、患者・ご家族・ご遺族の皆様の思いを受け止めながら、真摯に取り組んで参ります。

 その上で、公明党は、政府に対し、関係省庁と緊密に連携を図りつつ、関係者の皆様お一人お一人と寄り添いながら、隙間のない救済を進めることを求めてまいります。

立憲民主党

 アスベスト被害者の属性により救済内容に格差が生じない隙間のない救済を実現するため、縦割り行政を排し、情報公開・情報開示の促進や、患者・家族をはじめとする関係者の参加を確保しながら基金を創設するなどのアスベスト対策を総合的に推進します。

日本維新の会

 1に同じ。

日本共産党

 創設に賛成です。とりわけ患者と家族、遺族代表が機構に参加することは当事者でしかわからない健康被害の苦しみを機構に反映するうえで欠かせないと考えます。

国民民主党

 1に同じ。

れいわ新選組

 賛同いたします。

①石綿健康被害救済推進協議会の創設について

 司法の後追いではない解決のため、アスベスト被害者の声を聞く石綿健康被害救済推進協議会を創設すべきです。そして、スムーズで横断的な問題解決をはかるため、厚労省だけでなく、環境省、総務省など省庁横断の組織にすべきです。

②当事者の恒常的な参加について

 創設される石綿健康被害救済推進協議会では、ILOの三者原則にとどまらず、構成員にさらに当事者であるアスベスト被害者を加え、当事者の恒常的な参加を認めるべきです。現状でも過労死等防止対策推進協議会(厚労省)、今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会(国交省)、今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会(国交省)では当事者が審議会を構成しています。今年の通常国会では、れいわ新選組は、高額療養費制度や労働施策総合推進法改正案(通称カスハラ法案)などをめぐり、制度を変更する過程には、利用者や障がい者など当事者の声を聞く機会を設けることを訴えております。

3 アスベスト疾病に関する労災審査請求時の鑑定について

 石綿関連肺がんかどうかの判定は、アスベストばく露と医学的所見が必要です。労働基準監督署が労災を不支給とした場合、被災労働者や遺族は審査請求できます。

 審査請求段階の鑑定について衆院総務委員会で「鑑定医が同じなら同じ結論になってしまう。これでは、審査請求の意味がない。・・・丁寧な不服審査が必要ではないかと思いますが、いかがでありましょう。」との質問に対し(2014年5月15日、近藤昭一議員)、「(労働者災害補償保険)審査官が、監督署が意見を依頼した医師・・・とは異なる専門医からの意見を求めることも含めまして、審査請求事件の公正かつ適正な処理をするために、丁寧な対応に努めてまいりたいと考えております」と厚生労働省が答弁しています。

 アスベスト疾病の労災審査請求のあり方について、どのように考えられますか。

自由民主党

 1に同じ。

公明党

 ご指摘の厚労省答弁にもありますが、審査請求時の鑑定について、審査官が必要であると判断した場合は、新たに医学的意見を収集する等により、必要な調査を行うものと承知しています。労災保険の給付対象と認められるかどうかについて総合的に判断し、公正かつ丁寧な対応が必要であると考えています。

立憲民主党

 労災保険制度は、被災労働者の社会復帰の促進等を図り、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする制度であり、当初の鑑定医と異なる鑑定医の意見を求めるといった対応を行い、丁寧かつ公正な審査となるようにすべきです。

日本維新の会

 1に同じ。

日本共産党

 丁寧な不服審査が必要です。審査請求の際に異なる専門医からの意見を求めるなど、公正かつ適正な審査がなされるようにすべきです。あわせて、厳しすぎる労災認定の在り方そのものについても見直す必要があると考えています。

れいわ新選組

 労災保険審査請求制度の趣旨は、国民の権利利益の救済を図るとともに、労働基準監督署の適正な運営を確保することです。労災保険審査請求において、労災不支給の原処分で監督署が意見を依頼した鑑定医に、審査請求でも再び鑑定を依頼することは、原処分の鑑定結果と同じになる可能性が高いため、国民の権利利益の救済を図ることにつながりません。アスベスト疾病に関する労災審査請求時の鑑定は、原処分の鑑定医と別人の鑑定医によって実施されるべきあり、鑑定医を公開するなどして審査の透明性を高めるべきです。なお、労災補償を支給しないとした久留米基準監督署の決定を、別の医師の意見を採用した厚労省の労働保険審査会が2008年7月14日に取り消し、業務と死因との関連を認めた事案では、再審査請求時の鑑定が原処分の鑑定医と別人の鑑定医によって実施されており、評価できます。

4 元国鉄労働者の特別遺族給付金(労災時効救済)について

 石綿救済法(厚生労働省関係)の労災時効救済制度について、厚生労働省は死亡診断書に中皮腫などアスベスト疾病が記載されており、石綿ばく露が認められれば、特別遺族給付金を支給します。

 ところが、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が石綿救済法や労災認定基準に拘束されないとしているため、JR元職員の遺族は救済されますが、旧国鉄元職員は、死亡診断書に中皮腫と記載されていても遺族が救済されないという問題が生じています。参院の質問主意書に「旧国鉄元職員の遺族及びJR元職員の遺族間の権衡(けんこう)を失することは、許されない」との指摘があります(2025年2月28日質問第48号、4月11日質問第95号、福島瑞穂議員)。

 上記の問題について、どのように考えられますか。

自由民主党

 1に同じ。

公明党

 日本国有鉄道の元職員に係る労働災害の認定等については、「石綿による健康被害の救済に関する法律」は適用されず、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が定めた基準に基づき、対応が図られているものと認識しております。引き続き、関係者のみなさまに寄り添いながら、必要に応じた対応に努めてまいります。

立憲民主党

 アスベスト被害者の属性により救済内容に格差が生じない隙間のない救済を実現するため、縦割り行政を排し、対策を総合的に推進すべきです。

日本維新の会

 1に同じ。

日本共産党

 死亡診断書に中皮腫と記載されていても遺族が救済されないのはあまりにも理不尽です。厚労省の認定基準に沿って死亡診断書の記載を尊重すべきです。鉄道・運輸機構は、厚労省の認定基準を運用していると言いながら、実際は「死亡診断書」条項を無視した運用をしており、政府や国会で唱えられたアスベスト被害の「すき間ない救済」に反します。

れいわ新選組

 御指摘の事案については、申請者からの異議の申立てを受けて、鈇道建設・運輸施設整備支援機構において再審査を行った結果、令和6年11月に業務災害として認定されたものと承知しています。

 そもそも石綿による疾患については、潜伏期間が長く、石綿と疾患の関連性に気づきにくいなどの他の疾患とは異なる特徴があるため、申請をしないうちに被害者が死亡した後5年が経過し労災遺族補償の時効期間が過ぎても、遺族に対し特別給付金等の支給を認めているという特段の事情があります。そして、その際カルテが5年で廃棄され、医学資料が整わないなどの事情を合理的に考慮する必要があります。石綿被害は、救済法の趣旨にのっとり「すき間ない救済」をすべきであり、旧国鉄元職員の遺族及びJR元職員の遺族間の権衡を失することは、許されないと考えます。