石綿肺の切り捨て
じん肺、石綿肺は長年の研究と運動で、合併症の段階から労災療養できるようにさせてきました。(石綿肺は、じん肺の一種です)
尼崎の石綿公害の発覚、クボタ・ショックのあと、運動によって石綿救済法ができ、 やがて石綿肺も救済給付が支給されるようになりました(環境省関係)。
ところが、それを検討する際、とんでもないことが起きました。
第174回国会 269 石綿健康被害救済制度における指定疾病に関する質問主意書 (shugiin.go.jp)
質問主意書によれば「本[2010]年一月二十二日に開かれた、第三回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会において、北海道中央労災病院の木村清延医師は、じん肺労災認定患者のうち、本来じん肺の合併症である続発性気管支炎は少数のはず、聴覚障害不正受給事件があったなどと報告した」と。そのため救済給付では、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺(じん肺管理4相当)のみ認め、続発性気管支炎など合併症が指定疾病に入りませんでした。
上記質問主意書に対する内閣答弁書では、じん肺等のうち合併症の比率は約80%なので、石綿肺の多数が切り捨てられたことになります。
さらに救済給付における石綿肺の認定率は、下記環境省のまとめ9-11頁の通り、著しく低い。
【資料3】石綿健康被害救済制度の施行状況等について (env.go.jp)
たとえば2006-2021年度、療養者で申請417に対し、認定は39です。
救済給付の石綿肺診断書様式は、鑑別・切り捨ての色彩が濃い。
さて、建設アスベスト給付金制度ができ、国の上乗せ賠償がされるようになりました。
建設アスベスト給付金の肺がん・中皮腫などの診断書様式は、監督署が主治医に依頼する様式を流用していますが、石綿肺は厚生労働省の「じん肺管理区分申請」の診断書を使わずに、環境省の救済給付とほぼ同じ、鑑別・切り捨ての様式です。
厚生労働省は、建設アスベスト給付金の石綿肺診断書様式を作成する際、専門家に聞いたと言いますが、その専門家名は公開されていません。
このようなインチキな診断書様式を使うのではなく、従来のじん肺管理区分申請の様式に沿って、判断すべきです。
じん肺、石綿肺について切り捨てようとする動きがあるので、粘り強く取り組む必要があります。