阿部知子衆院議員が、消防士・消防団員の被害について国会質問
阿部医師・議員が6月10日、衆院総務委員会に質問。答弁は、村上誠一郎総務大臣です。(阿部議員は、クボタ・ショック20年の集会にメッセージを寄せてくださいました)
消防士の職業は、発がん性あり
○阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。
私は、元々長く医師をやっておりまして、国会議員になってからも、特に働く皆さんの労働災害、公務災害などについては、なくせるものをできるだけ軽減していくということに向けて取り組んでまいりました。その趣旨にのっとって本日の質問を進めさせていただきます。
冒頭、一問目ですが、まず大臣のお手元の参考資料を御覧いただきたいと思います。
いわゆる消防職員、団員がどんな公務上の災害に遭っているかということで、上段は消防白書から抜きまして、下段は地方公務員の災害補償統計というものから引かせていただきました。御覧になって分かるように、亡くなられた方がこの年は4名、消防職員並びに団員。ここは団員の死亡はありませんが、危険業務でありますので、毎年数名、多いと7、8名の死亡者が出ております。
その多くが転落とか、けがとか、外側の事象からくるもので、下はそのための公務上の補償統計からでありますが、見ていただきますと、下の段の死亡者数は、実は公務員の中で消防職員が一番多いということになっております。他に危険業務はいろいろございますけれども、警察も自衛隊もいろいろなところで国民を守るために危険なお仕事をしてくださっていますが、消防職員も非常に多い数がお亡くなりになっているというデータでございます。
さて、その上で、大臣、二枚目を開けてくださいますか。
2022年、国際がん研究機関、英語で略称するとIARCと申しますが、そこで消防士の職業を発がん性ありと、いわゆる業務起因性で発がん性のある仕事だというふうに分類し、グループワン、一番リスクの高い群に置いてございます。これはランセットという有名な雑誌の中にも出てまいりまして、国際的に広く知られるところとなりました。この中でいろいろ書いてございますが、消防士さんにがんが多いんだということが初めて公に国際的に明らかにされた文書かと思いますが、大臣にはまずこのことの御所見、どう受け止められますでしょう、お願いします。
○村上国務大臣 阿部先生の御質問にお答えします。
何せ私は浅学非才なもので、今日、先生の御質問を聞いていろいろ勉強しました。
2022年7月のインターナショナル・エージェンシー・フォー・リサーチ・オン・キャンサーの評価におきまして、消防士としての職業上の暴露がヒトに対して発がん性があるグループワンに分類されたというのを聞いております。
このような評価を含めまして、消防隊員の皆さんは災害現場におきまして有害な化学物質に暴露する危険性を有しておりまして、隊員の安全管理は極めて重要である、そのように認識しております。
このため、総務省消防庁におきましては、消防隊員の安全管理マニュアルを全国の消防本部に通知しておりまして、各消防本部においても、防護服や空気呼吸器の確実な着装など、適切な安全管理に努めていただいております。
総務省消防庁としましても、引き続き消防隊員の皆さんが安全に現場活動を行えるようしっかりと取り組んでまいりたい、そのように考えております。
クボタ・ショック後、消防職員と消防団員の石綿被害の健康実態調査
○阿部(知)委員 隊員を守るためにいろいろやっていただいていること、防護服やマスクのお話も大臣にしていただきましたが、私は、まず大前提として、職員並びに関係者にがんが多い仕事なんだということを自覚されることから全てが始まるんだと思います。
実は、アメリカのいわゆる国立労働安全研究所、ここでは2013年から、今を遡ること十数年前から、中皮腫、アスベストによるがんですね、これが消防士さんは他の職種の二倍であるとか、様々な消防士さんのがんについての研究をしてこられました。また、アメリカ及びカナダの消防士のがん罹患などを分析している団体によれば、消防士さんの死亡原因の第一位はがんで全体の67%を占めると。こういう先行する報告の上に、2022年7月1日に国際がん研究機関により職業としてグループワンに位置づけるということがあったわけでございます。
大臣、次のページを開いていただけますでしょうか。
これは国際消防士連合というところが集計を分かりやすく出しておられますが、上段が、実は2001年から急速に消防士のがんの発生が増えているという図でございます。そして、2002年から2023年の調査によれば、消防士として働いていた方の死亡原因一位ががんであると。これは先ほど申し述べましたが、それを分かりやすく。この国際消防士連合というところはそういうことを消防士さんたち共有の認識にして、今大臣が冒頭おっしゃってくださった様々な備えをどうしていくかということにも心を砕いている団体であります。分かりやすいので、御紹介をさせていただきました。
その次のページ、さて日本はといいますと、職業が原因でがんになる、これを職業がんと申しますが、この認識について非常に低いということが言われています。その理由は、業務との関係性が明確になっておらず労災認定がなかなかされないというようなこととか、あるいは、いわゆるアスベスト、石綿による肺がんや中皮腫にしても世界各国の統計よりははるかに少ない、年間900人ほど、そして、そのほかの職業がんとして労災認定されている人は20人ほどであると。
下に比較の表を置いてございます。これは化学物質情報管理研究センターの労働安全衛生研究所から取りましたが、例えばイギリスにおいては、亡くなられた職業がんの方のうち、9000人おられるんですけれども、5000人が石綿によるものであると。中皮腫か肺がんかということですね。比べて日本は、人口は倍なんですけれども900人弱であると。何が違うのか、私は認識をきっちりと共有してもらって予防してもらうということが大きいと思うんです。
次のページを見ていただけますでしょうか。ここには今申し上げたアスベスト、2005年に大きな問題になりました、尼崎というところでアスベスト、石綿のある工場の周辺住民にアスベスト被害が出たのでアスベストによる健康被害ということが大きくクローズアップされたときですが、そのとき一応、消防庁としてはこうした通知、通達を出しておられます。これまで、警戒警報が鳴るのはNBCといって、ニュークリア、バイオ、ケミカルなどについては十分防護せよという通知が出ておるんですが、そこにはないアスベストについての通知でありました。
大臣はそもそも、先ほどの、職業がんが日本では発見されづらい、特に消防士さんにおいてはアスベストの問題が大きいという認識はこれまでおありであったでしょうか、お伺いいたします。
○村上国務大臣 私の母も兄弟も娘もみんな一緒でしたが、この問題については残念ながら非常に認識が薄かったと反省しております。
○阿部(知)委員 大体そうなんだと思います。言われれば、ああ、そうかなと、アスベストは建物のいろいろなところに使われているし、消火活動をイメージしてもらえば分かりますけれども、火が一回消えた後、更に鎮火を確実にするために建物の一部を取り壊したり、よく江戸の火消しで何かとがったものを持ってこうやって落としている姿を思い起こしていただければ分かりますが、実はそこにはアスベストが満載であります。特に昭和50年代以前の建物はどこもかしこもアスベストで、火事が消えた後、再び燃えないようにするための活動というところが非常にアスベストに暴露されやすいわけです。
今大臣はこれまでは余り御認識がなかったとおっしゃいましたが、実は2005年に総務省はこの通知とともに実態調査をしておられます。偉かったなと思うんですけれども、2005年に総務省が消防職員と消防団員の石綿被害の健康実態調査をしている。この実態調査は十年間でありますが、ここで消防職員3名の中皮腫、498名の肺がん、消防団員17名の中皮腫、458名の肺がん。これは、十年の集計を、既にお辞めになった方も含めて、地方の各消防本部にお願いして県が取りまとめた結果でございます。
私のところにレクに来ていただいたとても優秀な総務省の職員の方にも、なかなかこの情報は直にはいただくことができず、私の方からお尋ねして、こういうのがあるんじゃないですかと。
消防庁というか総務省は頑張ってきたんだから、これは総務省調査ですけれども、非常に貴重だと思うんですね。十年間ではありますが、現職とリタイアした人と消防団員なども含めて調査をした。この当時、アスベストということが焦眉の話題になっていたからとは思います。
大臣にも、これを見ると、全てがもちろんアスベストによるものではないです。でも、やはり多いんだなという認識を持つか持たないかで対策は違ってくるので、是非、この調査、現物を出してくださいと申し上げましたが、20年前で、ないということでありましたので、とても残念です。こういう貴重なものこそ取っておいていただきまして、職員の安全管理に生かしていただきたいとまずお伝えいたします。
そして、そういうことを受けて、果たして中皮腫、アスベストなどについてはどれだけ公務災害認定があるかということで、次の資料六を御覧いただきたいと思います。
ここでは、三番目に消防職員のアスベストによる中皮腫、肺がん、石綿肺などが出ておりますが、字が小さくて恐縮ですが、下に少しまとめさせていただきますと、地方公務員災害補償基金の石綿関連疾病に係る公務災害の認定割合は依然として超低水準にある。
これは2019年の論文でしたので、それ以前ですけれども、そこまでのところ、認定状況を見ると、認定で多いのは電気、ガス、水道事業職員。これは当然ですよね、そういうところで配管したり施工したりしますから。続いて、学校の先生、そして学校の先生以外の教育職員もあります。次に、消防職員、始まってからの年数で10件で、認定率が52.6%ということ。中皮腫の公務上の認定割合はここで47.3%。全体を見れば非常にいわゆる公務員ではないところの職種と比べると低い。95%がほかで、こちらは47.3%だということで、とにかく公務員全体は低いんですが、プラス、消防職員の石綿肺がんでの認定割合、特に肺がんはゼロ。職種全体ではほかの職種に公務員を広げれば21.1%ということで、いずれにしろアスベストによる肺がんもなかなか認定されておらないということがここから分かるんだと思います。
1995年から今年で30年たちました。1995年から2005年までの調査が先ほど御紹介したものであります。是非、村上大臣の手で、その後の20年、果たして消防職員、団員にどのくらい中皮腫や肺がんがおられるのか、必ずしもアスベストとは断定できません、でも数を把握すれば多いか少ないかは出てまいります。そうした調査を2005年の総務省と同じようにやっていただきたいが、大臣、いかがでしょう。
○田辺政府参考人 委員から御紹介いただきましたが、2005年の消防職団員に対する健康実態調査は、平成7[1995]年七月から平成17[2005]年7月までに中皮腫等により死亡又はこれらの疾病に罹患した消防職団員及びその退職者の人数について、各都道府県を通じて全国の消防本部及び消防団本部を対象に調査したものでございます。
この調査の結果では、中皮腫に罹患又は死亡した消防職員は3名、消防団員数は17名でした。
消防庁といたしましては、この調査に合わせて、消防職団員については災害現場活動中に石綿等の有害な粉じんを吸引する可能性があることから、現場活動時における防じんマスク等の着用の徹底を求める通知を全国の消防本部に対して発出しているところです。
現在は、地方公務員災害補償基金の公表資料にて消防職員における中皮腫等の公務災害件数を確認しているところでございまして、引き続きこれらも踏まえて安全管理の徹底を図ってまいります。
○阿部(知)委員 申し訳ないが、質問はよく聞いてほしいんですね。今の御答弁は、全部私が言ったことを丁寧に翻訳してくださったんだと思うんです。
私は、その上で、かつて1995年から2005年までに調べたらこれだけの数があったよ、その後様々な注意喚起がやられたでしょう、しかしその後はどうだったのか、その後の20年を調べていただけませんかとお尋ねしたんです。今の御答弁は、前のことと、公務災害で認められた人だけ。何度も申しますが、認められる率が低いんだということをお話しした上で質問を投げたつもりであります。私が長く言ったので混乱させたかもしれませんが。
大臣、もう一度お伺いいたします。かつての2005年の調査、あわせて、20年たったんだから、一体その後の20年はどうなったのか。消防職員、団員は守られているのか。きちんと公務災害認定を受けられているのか。私はとても重要だと思うので、2005年の調査と同じようで構いません、やっていただけませんか、いかがでしょう。大臣にお願いします。
○村上国務大臣 阿部先生の御指摘でございますので、一生懸命検討させていただきます。
○阿部(知)委員 村上さんは検討大臣じゃないと思っているので、実行大臣であることを期待して。
本当に貴重な人材です。今、山火事も増えておりますし、皆さんもお地元で消防団員、職員の、お正月であれば出初め、ふだんであれば訓練の様子を見ておられて、私たちを守ってくれている人たちですから、それを国が守らない手はない。
大臣もよく御承知のように、消防は地方分権で各自治体がやっております。それがやれないような、もうちょっと俯瞰的なことをやるのが総務省の役割と心得ておりますので、是非、実行大臣でお願いをしたいと思います。
○村上国務大臣 再度答弁させていただきます。
しっかりと調査させます。(会議録終わり)
なお、消防を含む地方公務員のアスベスト被害は、下記のとおりです。
地方公務員のアスベスト公務災害 – アスベスト患者と家族の会 連絡会