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石綿肺・続発性気管支炎の切り捨ては許されない

お知らせ 制度・改善

 1977年改正じん肺法では、労災認定にあたって医師の総合的判断を重視すること、じん肺合併「続発性気管支炎」を認定することになりました。

 じん肺の一種である石綿肺は、原因不明の(特発性)間質性肺炎・肺線維症と誤診されることが多い。

 建設業など石綿肺の被害が埋もれているのに、認定を厳格にして、切り捨てることは許されません。

 しかし、今まで(2004年、2007年)「じん肺診査ハンドブック」の基準に反する不認定がなされ、そのたびに審査請求などによって切り捨てが撤回されました。

 また、2010年の中央環境審議会石綿健康被害救済小委員会では、続発性気管支炎について「不正受給」であるかのように印象づける報告がされ、「救済給付」から石綿肺の合併症が排除されました。当時、鳩山内閣は答弁書で、労災のじん肺合併続発性気管支炎は「不正受給ではない」としました。

 2025年5月7日の厚生労働委員会で、田村貴昭委員が「じん肺診査ハンドブックの改訂」について質問しました。やり取りは、次の通りです。石綿肺の多数を占める合併症患者が安心して療養できるよう、引き続き監視が必要です。

○田村(貴)委員 アスベストの被害者救済について質問します。

 現在、じん肺健康診断の実施手法や判定を定めたじん肺診査ハンドブックの改訂作業が進められています。改訂案では、じん肺の合併症である続発性気管支炎の判定について、たんの検査、膿性たんの判定に用いる喀たん中好中球エラスターゼ測定という判定方法が望ましいというふうに示されています。しかし、たんの成分検査は、検体の処理方法や測定までの手順について標準化されておらず、労災病院による研究結果でも、カットオフ値、つまり、陰性、陽性の境界値についても施設間でばらつきがあります。感度、特異度とも、客観的指標とするには低いとの指摘があります。

 質問しますけれども、二つ分けて質問しますね。

 まず、たんの成分検査というのは、今度のハンドブックで必須とするんでしょうか。補助的な検査として望ましいと検査を求めるにしても、絶対条件としないことが求められますが、いかがでしょうか。

○井内政府参考人  じん肺診査ハンドブックは、じん肺健康診断やじん肺の判定に使用するもので、昭和五十三年の発刊後、医療の進展、医学的知見の集積等を踏まえ、研究班が策定した改訂案を本年三月五日の労働政策審議会安全衛生分科会じん分科会でお示ししたものでございます。

 今御指摘のありましたたんの好中球エラスターゼに関しましてですが、続発性気管支炎に関する総合的な医学的判断の一助になり得るものとして、膿性たんが持続する場合には検査して確認することが望まれると記載されていると認識をしております。この検査結果をもって合併症の有無が機械的に判定されるものではなく、あくまでも総合的な医学的判断で判定されることは従来と変わりないと考えております。

○田村(貴)委員  また、この検査は、検査できる病院が三つしかありません。この検査結果を申請時に求められるならば、救えない人、そして切り捨てられる人が出てくるのではないでしょうか。

 しかも、この検査は、保険収載もされておらず、申請費用が高額になることも予想されます。検査が高額なためにアスベストの被害補償の申請ができない、そういう事態を招いてはいけないと思いますが、一体どうしますか。

 いずれにしましても、じん肺の健康診断及び判定が適正に行われるようにしていきたいと思います。

○福岡厚生労働大臣  先ほども申し上げましたように、この検査の位置づけにつきましては、引き続きじん肺部会で御議論いただくことになります。そして、重ねてになりますが、これはあくまでも総合的な医学的な判断で判定されることは従来とは変わりはございません。

 いずれにしましても、じん肺の健康診断及び判定が適正に行われるようにしていきたいと思います。

○田村(貴)委員  必須ではない、絶対条件ではないということですね。はい、確認しました。

 じん肺診査ハンドブックの改訂案では、石綿肺の診断においてHRCT、高分解能CT検査で確認することが肝要など、胸部CTの有用性が強調された箇所が散見されています。

 しかし、厚生労働科学研究で行われた調査結果では、CTでは医師によって診断のばらつきが出るために、胸部CT検査は標準化されてはいません。

 厚労省は、従来、じん肺の診査については単純エックス線写真を用いてきました。CTはあくまで補助的検査として表現すべきであろうと考えますが、これはいかがでしょうか。

○井内政府参考人  じん肺診査ハンドブックについては、昭和五十三年に発刊してから大幅な改訂が行われていないことから、医療の発展、医学的知識の集積等を踏まえた現状に即したものとするため、令和四年から六年度にかけて、じん肺健康診断とじん肺管理区分決定の適切な実施に関する研究において改訂案を作成していただき、令和七年三月五日の第二十六回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会において案を示したものであります。

 そこでのCT写真についてということでございますが、じん肺健康診断における画像はじん肺法第三条でエックス線写真とされており、御指摘の胸部CT写真については、通知にて健康診断の際に参考資料として閲覧して、特にじん肺所見があると総合的に判断する場合に利用して差し支えないという扱いであり、今回のハンドブック改訂案でも、この取扱いを変更するものではございません。

 このように、胸部CT写真の取扱いについては一貫して補助的な位置づけとしているところであるが、改訂案の記載につきましては、医療の発展、医学的知見の集積等も踏まえつつ、引き続きじん肺部会で御議論いただきたいと考えております。