ニュース

石綿肺の労災、20代賃金は不当――福島労災審査官に審査請求

お知らせ 制度・改善

 渡邉正幸さんは3月21日、いわき労働基準監督署で福島労災審査官に会い、石綿肺合併症の労災給付基礎日額が「25~29歳」の年齢階級で算定されていることは不当だと訴えました。

 渡邉さんは20代に、スレート建材の切断作業、堆積した粉じんをトラックに積む作業を行い、粉じんにばく露しました。その後、粉じんにばく露しない運送業に従事し、50代でじん肺・続発性気管支炎が発覚(じん肺の専門医が少ないため、誤診されていることが多い)。

渡邉(わたなべ)正幸さんの体験談 – アスベスト患者と家族の会 連絡会

 渡邉さんは、次のように主張しています。

10年以内に発症することはなく、20代の賃金は不合理

 アスベスト疾患は遅発性なので、石綿にばく露した20代に発症することはあり得ません。

 業務上疾病は、業務に内在する有害因子にばく露してひき起こされるものですが、石綿健康被害の特殊性として、ばく露してただちに発症することはなく、たとえば本件のように30年後の50代で発症するのです。

 そうすると、発病するわけがない20代の賃金を基礎に算定することは不合理です。

 労災の原則のひとつは「稼得能力の損失補填」なので、20代の低額でなく、50代発症時の賃金にするのが、その原則にかなうと考えます。

1970年の国会答弁は、発病時の賃金で算定ということ

 議員の質問が不正確なためややわかりづらいものになっていますが、和田労働基準局長の答弁は、過去の賃金ではなく、発病した時の賃金を算定の基礎にするというものです。

 そうすると、本件は57歳発病時の運送業の賃金を基礎に算定すべきです。

後続の休業補償で、給付基礎日額を見直すことができる

 既決定の給付基礎日額について、遡及して算定し直せるかどうかの問題もあります。

 これについては、別件 東京審査官の決定書(2024年8月13日付け)をご参照ください。後続の休業補償について、給付基礎日額を見直すことは容認されています。

現在、厚生労働省の研究会で「20代賃金見直し」を検討中

 当日、審査官に「労災保険制度の在り方に関する研究会」における「遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額」に関する資料、2月21日の「委員発言の概要」を渡し、発症時の賃金で算定する方向性を伝えました。

 連絡会は2月10日に、上記研究会に下記の要望を送っており、それも審査官に渡しました。そこには渡邉さんの事案も含まれ、20代の賃金で算定すると日額7000円前後になります。

厚生労働省に「労災保険制度の在り方に関する研究会」にかかわる要望(労災給付基礎日額) – アスベスト患者と家族の会 連絡会

 渡邉さんは重篤な石綿肺のため在宅酸素を持参し、車椅子で来庁。じん肺の合併症である続発性気管支炎は、治りません。

 不合理な給付基礎日額を是正し、渡邊さんご夫妻の生活を守るべきです。