石綿肺・合併症切り捨ての危険――じん肺診査ハンドブック改訂案
労働政策審議会じん肺部会が3月5日、厚生労働省で開催されました。労政審は、ILOの三者原則:労働者代表・使用者代表・公益(専門家)からなる審議会です。
第26回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会 資料 |厚生労働省
石綿肺などじん肺の健康管理、労災療養に相当するかなどを労働局が決定する際の指針になる「じん肺診査ハンドブック」の改訂が予定されています。今年4~9月、じん肺部会において検討し、12月に改訂を確定することにしています。 001430746.pdf
続発性気管支炎切り捨ての策動
じん肺の合併症である続発性気管支炎の判定は、たんの量・性状によりますが、改訂案では「膿性(のうせい)たんの指標として、たんの好中球エラスターゼ値の検査が望まれる」とあります。たんの好中球エラスターゼ値測定は保険収載されておらず、未だに基準値さえ確定できていないものであり、これは合併症としての続発性気管支炎を認定させないためのものではないでしょうか。
かつて2010年1月22日に開かれた、第三回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会において、じん肺労災認定患者のうち「本来じん肺の合併症である続発性気管支炎は少数のはず、聴覚障害不正受給事件があった」などと報告されました。
第174回国会 269 石綿健康被害救済制度における指定疾病に関する質問主意書
吉井英勝衆院議員(当時)が質問主意書で「続発性気管支炎の患者を『不正受給者』と考えるのか、明らかにされたい」とただしたところ、鳩山内閣は「じん肺の合併症としての続発性気管支炎にかかっているとして労災認定が行われた者が、保険給付の不正受給者であるとは考えていない」という答弁書を出しています。
実は、上記石綿健康被害 救済(?!)小委員会で報告を行った医師も、じん肺診査ハンドブック改訂に関する研究の協力者なのです。 001430699.pdf
改訂案では、胸部CTの有用性が強調されています。厚生労働省の研究班でさえ、「胸部CTで、じん肺の診査をおこなうのは時期尚早」と結論をだし、じん肺の判定は胸部エックス線写真で行うと強調しているにもかかわらず、CTにうつっていないからじん肺を認めないとされる危険性があります。
肺機能検査について「検査によって得られた数値を判定基準に機械的にあてはめて判定することなく、粉じん作業の職歴、エックス線写真像、既往歴及び過去の健康診断の結果、自覚症状及び臨床所見、その他の検査等を含めて総合的に判断すること」というくだりは残りました。しかし、労働局のじん肺診査医の中には1次検査(%肺活量など)と2次検査(動脈血ガス測定)の数値をすべて満たさなければ認めない、前記の但し書きは「数値が基準を満たしても、それを以って機械的に認定すべきではない」と言う趣旨だという、誤った対応をしている人もいます。
労政審じん肺部会には、「じん肺標準エックス線写真集改定案」も出されました。この改定案に対する昨年12月のパブリックコメントでは、連絡会の東日本支部でいつも講演して下さる藤井先生をはじめ、建設業による石綿肺などの症例を多数診ている医師が連名で意見を出しました。(下記、9項) 001430697.pdf
その意見では「標準写真の改正に関しては多くの研究者やじん肺診断・診療にあたっている医師の合意が必要である.標準写真集の改定を直ちに行うのではなく,日本産業衛生学会・職業性呼吸器疾患研究会をはじめとした研究会等でDICOMデータを示して意見集約を行うことが必要と考える」と指摘されています。
じん肺部会の委員である全建総連や専門家と連携して、石綿肺・合併症の切り捨てを阻止しなければなりません。